第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
「溝があるなら埋めればいい! 言葉が足りなければ重ねればいい! 人はなんの為に知識を持ち、言葉を学ぶ? 他者と寄り添う為だろう!」
それでも一向に向き合えない心があることは知っている。
父上がそうだ。
それでも父上がいつかまた俺を見てくれるようになるまで言葉をかけ続けるつもりだ。
俺がそれを止めてしまえば、本当に父上との関係はそこで終わってしまう。
諦めるのは自分が死すべき時でいい。
「…言われなくてもそんなことわかってんだよ。説教垂れんじゃねェ」
「説教ではない! 柱としての言葉だ! 君達とは同じ立場だと思っている! 同じ兄として言葉を交わしているつもりだ!!」
「お前、ほんっとそういうところあるよな…見てて暑苦しいわ」
素っ気ない口調の二人には、どうやら俺の熱意は伝わっていないようだ。
「冷えた感情より熱い思いだろう! その証拠に弟の千寿郎は俺を慕ってくれている!! 君達とは違ってな!!」
「はぁ?」
「ァあ?」
その言葉に嘘はない。
千寿郎は俺を信じてついてきてくれている。
だから剣士としての才覚が見えずとも、日々の鍛錬を怠らず努力しているんだ。
そんな千寿郎が俺はとても誇らしい。
胸を張ってただ事実を伝えれば二人の顔色が変わった。
そうして感情を沸き立たせるくらいには、弟のことを気にかけているというのに。
この二人は兄弟に対して素直じゃないところがある。
「兄が兄なら弟も弟となる! しっかり見据えてしっかり愛するといい!」
「上等だァ。誰が誰をどう見てないって?」
「仲良しこよししてりゃいいってもんじゃねぇだろ。派手に上等」
圧を飛ばせば、等しく柱としての圧を返してくる。
他人の俺にそうやってぶつかれるのなら弟にだってぶつかれるはずだろうに。
…仕方ない。
「ならば上等! まとめて相手をしてやるからかかって来い!」
兄の使命がなんたるものか俺がその身に叩き込んでやろう!!!
「…で? 柱ともあろう方達が集って喧嘩して、竹林一つ消し飛ばしたんですか? 馬鹿ですか?」
「はっはっは! 面目ない!!」
それから更に一刻。
至る所に青痣を作った状態で、胡蝶の説教を喰らうこととなった。
よもやよもやだ!!