第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
感情が伝わる指先に、そっと顔を上げる。
頬を上気させつつも、彷徨う視線は迷いと同等。
…体は震えてはいないな。
「嫌なら止めよう」
俺の頭に触れていた手を握り返す。
指を絡めて優しく握り、等しく優しい音色で声をかけた。
その身を怖がらせないように。
「だが嫌じゃないなら、拒まないで欲しい」
無理矢理に抱きたい訳ではない。
蛍が恐怖することを強制はしない。
しかし抱く度に微かに体を震わせる蛍は、偶に何かに耐えているようにも見える。
故に一歩踏み出す際は、こうして問いかけるようになった。
彼女が安心して、俺に身を預けられるように。
「…わかってやってる?」
「うん?」
返されたのは、恨めしそうな瞳。
「その訊き方…狡いよ」
顔は未だ上気したまま。
恨めしそうに見てくるというのに、声が甘い響きを持つ。
その返答は、了承と同じ意味だろう。
なのに素直に受け入れられる時とは違う感情が、背筋を駆ける。
「君も、わかってやっているのか?」
怖がらせたくはないと思うのに、そんな反抗的な目も見ていたいと思う。
征服欲とでも言おうか。
「そんな顔でそんなことを言われては、更に歯止めが利かなくなるというのに」
この体を隅々まで俺の色に染めて、その目もやがては俺しか映さなくなれば良いのにと思う。
反抗的な目をすればする程、快楽に堕ちる様を見たいと強く感じる。
優しくしたいのに、無理矢理にでもものにしたい。
ちぐはぐな想いと欲が交差する。
俺からその欲が伝わったのか。胸元に滑り込ませた手を下腹部へと這わせていけば、息を呑む体が震えた。
「安心するといい」
「…え?」
「俺は君の感じる様が見たいだけだ。最後まで喰らうつもりはない」
「…………へ?」
まだ欲よりも理性が勝った。
果たしてその選択が功を成すかはわからないが、一先ずは。
「それってどういう…ぁっ」
「言葉のままだ」
「だからそれがどういう…ん、ちょっ杏寿…ッ」
「集中だ、蛍。俺の触れるところに集中」
「あッそこ、は…っ」
下る手が蛍の脚の付け根に辿り着く。
まだ濡れてはいない蜜の入口を優しく撫でながら、耳元に唇を寄せる。