第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
「蛍さん? どうされまし…あっ宇髄さま!」
「お。胡蝶んとこのチビ共」
「!」
「一体何事で」
「ごきげんよう!!」
「うおっ」
「えっ!」
「あ! 蛍さん!?」
「宇髄さま!?」
噂をすればなんとやら。
いつも蝶屋敷を元気に駆け回って働いているすみちゃん達が騒ぎを聞きつけてしまった。
あんなに愛らしい無垢な少女達に、こんな下品な話を聞かせる訳にはいかない。
即座に発動させた影鬼で天元の体を固定すると、腰の帯革を掴んで巨体を抱え上げる。
鬼だからできる腕力でそのまますたこらさっさと逃げ出した。
「おま…っ必死過ぎだろ…!」
「うるっさい…」
ようやく足を止めた休憩所で天元を解放すれば、腹を抱えて爆笑された。
大人しく私にされるがままだったのは嘲笑う為だったのか。本当腹立つこの忍者。
「あー腹痛ぇ…っ」
「いっそそのまま笑い果てろ」
「だから待てって」
不死川の真似をして、拳を握り親指だけ立てた状態で逆さまにして向ける。
意味はよくわからないけど、多分こういう時に使うものだ。
そのまま用はないと踵を返せば、またも襟首を掴まれた。
だから頸絞まるんだってそれっ
「まだ何か用?」
「用があるから声かけてるに決まってんだろ。阿呆かお前」
相変わらずムカっ腹立つ言い方するなこの忍者は。
だからつき合いたくないってのに。
「で、どうだったよ」
「何が」
「煉獄との交合だよ、交合。あいつ上手かったか?」
「……」
「おお。ここ最近で一番下衆(げす)なもん見る目したな」
ここ最近で一番下衆なもの見てます今。
「なんでそんなこと話さなきゃ」
「気持ちよくなれたか? 人間と鬼ん時とじゃ感じ方も違うのかよ」
「……それを話す理由ある?」
興味津々の天元の顔が、ここぞとばかりに覗き込んでくる。
その実力を兼ね備えた巨体を前にしても、化粧越しにでも伝わる美形を前にしても、私の心は微動だにしなかった。
寧ろ腹の奥底からじりじりと上がってくるのは不快感だ。
他人の性事情にずけずけと踏み込んでくる無神経なところもだけど、人と鬼との違いに興味を持つ目が、まるで見世物にされてる飼育動物のような気分になって。
はっきりと不快感を覚えた。