第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
恥ずかしいと言えば、これ以上羞恥心を煽ってくる相手はいないと思う柱もいる。
「よーう、猫娘!」
「ごきげんよう筋肉忍者」
「オイ待て出会い頭に逃げんな」
それがこの宇髄天元。
別名、音柱又は筋肉忍者。
月に一度の身体検査の日。
蝶屋敷の胡蝶を尋ねた帰り道に、ばったり出くわしたのがこの男。
蝶屋敷は鬼殺隊にとっての医療所だから、人と出くわす可能性は高いんだけど…まさか天元とは。
出会い頭のにこやかな笑顔は、以前より三割増しになった。
その満面の笑みが気味悪くて速攻背を向けたら、後ろからがしりと襟首を掴まれる。
頸絞まるからそれ。
「ふーん? へえ、」
「……何」
仕方ないと足を止めれば、真上から覗き込んでくる巨体の顔。
頸を大きく反り返して見上げれば、長い切れ目が見透かすように細まる。
「一皮剥けた感じはしねぇな…ってことはやっぱお前、生娘じゃなかったか」
「は?」
「煉獄は変わってたけどな」
「なんのこと言っているのか、意味がわかりません」
なんとなく嫌な予感はする。
天元はあからさまにからかう姿勢より、このいやに爽やかな笑顔の方が時に面倒臭かったりするからだ。
さっさとこの場から立ち去ろうと、襟首を掴む大きな手を掴まえようとすれば、それより早く解放された。
「何って、交合(こうごう)のことに決まってんだろ」
「…は?」
「は? じゃねぇよ。まぐわいだまぐわい。お前煉獄とヤッ」
「わー!」
此処外だけど!?
そんなよく通る声でいきなり爆弾投下しないで!
「うるっせ…お前煉獄に似てきたんじゃねぇか?」
「始終祭りで頭沸いてる男が変なこと言うからですが!?」
「変なことじゃねぇだろ。つか否定しないところ、やっぱお前煉獄とヤッて」
「わー!!!」
だから此処外! 蝶屋敷の前!
万が一すみちゃん達の耳にでも入ったら一生許さないからね!
この歩く十八禁が!!