第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
多分良い方に転んだんだろうな、と思うのは時透くんだけじゃない。
あのおっかな柱の不死川も、そうだ。
「なに昼間っから外を彷徨いてやがる」
「うわ吃驚した。いきなり死角から飛び出して来ないでくれるかな…心臓に悪い」
「鬼と太陽の下で出くわすよりマシだろォがァ」
番傘を差して曇り空の下を歩く。
隠の後藤さん達へのお使いの帰り道、傘の上からひらりと下りてきたのは、偶に忍者では?と思う不死川。
いっつも死角からやって来るんだよね…急にその顔が現れると心臓に悪いから。
もう慣れたけど。
「傘一つで真昼に外を闊歩する鬼なんざ聞いたことがねェ。死にてェのかァ」
「私の見解では、今日は一日曇り空です。時透くんのお墨付きだし大丈夫」
「…いつから天気予報士になったお前」
「鬼にとって天気を読むことは、人が食事を摂ることと等しく大事なことだから」
沢山言葉を交わすようになった時透くんに駄目元で頼み込んだら、空気の読み方から天気予想まで習えるようになった。
百発百中とはいかないけど、大分当たるようになったから昼間のお出掛けの見極め方には凄く役に立ってる。
一応紫外線遮断の袴はいつも身に付けて、顔以外しっかり隙間なく覆っているけど。
「あ。そういえばこの間、玄弥くんと同盟稽古した時にね」
「待てなんだその同盟ってのはァ聞いてねェぞ」
「これは私と玄弥くんとのことだから、いちいち報告する訳ないでしょ。余計なこと言うなって言ったのは不死川じゃない」
「それは玄弥に俺のことを話すなって意味で」
「それでね、玄弥くん盆栽育てるのに最近ハマってるみたいで」
「話聞けオイ! 盆栽だァ?」
「そうそう。悲鳴嶼さんから教えて貰って始めたらしいんだけど。渋い趣味だねって言ったら」
「別に渋くねェだろ人の趣味をとやかく言うなァ」
「玄弥くんちょっと照れた顔してて」
「あいつはそもそも女に面識ねェからそうなんだよお前だからじゃねェ」
「可愛かったなぁって」
「当然だろ」
…偶に思うけど、不死川って玄弥くんのこと大好きだよね。
なのに本人の前ではあの殺人級に冷たい態度。
二重人格では?て思うくらい。
本音は大好きだよね、相当。