第15章 情炎 あわひ 恋蛍✔
杏寿郎と"そういう間柄"になってから。
知らない顔を知ってしまったような、そんな感覚。
それは杏寿郎に対してだけじゃなかった。
杏寿郎と体を重ねるようになってから…というよりも、あの節分行事があってから、というか。
なんとなく関わり方が変わった柱達がいる。
わかり易く伝わったのは、節分時にずっと傍にいた時透くん。
「ふぅん。じゃあやっぱりあれ以来、同じ影沼は作れていないんだ」
「太陽に焼かれて、気付けば生み出していたものだから…ごめん、ね。力になれなくて」
「いいよ。多分そんなことだろうとは思ってたから。寧ろ意図的だった方が、なんであの場であんなことをしたのか、別の問題が出てくるし」
「そ、そっか」
なんだか私の影鬼に興味を持ったみたいで、偶にこっちに足を運んで来るから、その度言葉を交わすようになった。
相変わらずつっけんどんな言葉遣いも多いけど、頭ごなしに私を否定しなくなった。
ちゃんと言葉を聞いて、飲み込んでくれるようになったのは大きな進展だと思う。
お館様への報告の時に知ったことだけど、時透くんは私の影鬼の中では気を失っていたらしいけど…自分の失くした記憶の欠片を見たんだとか。
その記憶を取り戻す糸口を探す為に、話をしに来てるんだろうなぁ。
こんな若い子が、自分の記憶を失くして鬼殺隊で柱として戦っているなんて。
私にできることがあるなら力になりたいと思う。
「おお、時透か!」
「お邪魔しています、煉獄さん」
「うむ! 蛍とまた話をしに!?」
「はい。影鬼のことをもっと知りたくて」
「成程! ならば蛍と組手勝負でもしていくのはどうだ!!」
「えっ杏寿郎いきなり何を」
「組手勝負ですか?」
「話をただ交えるよりも、肌で触れ合うことで学べることも多い! もしかしたらまたあの影沼を作り出せるようになるかもしれないしな!!」
「そんな根拠のない」
「いいですね。やりたいです」
「えええ時透くんまでっ?」
「何。嫌なの? 鬼の癖に」
「鬼関係あるかなそこ!?」
相変わらず鬼差別は度々あるけど。