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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第14章 燈火の 影にかがよふ うつせみの



 生理的なものなのか。
 潤んだ瞳から、涙の粒が滑り落ちる。


「あッお、ねが…ッ」


 喘ぎ混じりに乞うように。
 熱を打ち込まれる度に揺さぶられていた細い脚が、杏寿郎の腰に絡みついた。


「い、しょに…ッ」


 押さえ付けられていた手が、縋るように握り返してくる。
 震える蜜壺が、杏寿郎の欲を搾り取ろうとするかのように甘く締め付けた。
 故意に耐えていた杏寿郎に限界を迎えさせるには、十分な代物だった。


「ぅ、く…ッ!」

「ぁあッ!」


 どくんと脈打つ陰茎から、迸る熱。
 温かい蜜壺の中に、白濁の欲を吐き出す。

 蛍も感じ取ったのだろう。
 何度目かの絶頂を迎えながら、全ての欲を受け入れた。


「っハ…ッはぁ…」


 乱れた黄金色の髪の下で、滲む汗が肌を伝う。
 熱く気怠げな吐息を零す杏寿郎の腰から、滑り落ちる蛍の脚。


「…蛍…」

「あ…っ」


 名残惜しさを感じながらも、ぐっと耐えてゆっくりと腰を退く。
 男根が抜ける感覚にも身を震わせる蛍の姿に、欲を潜めた目が様子を伺う。


「すまん…中に、出してしまった…」


 溜息にも似た吐息をついて、申し訳なさそうに眉尻を下げる。
 無責任な己の欲で蛍を染めてしまったことを悔やむ杏寿郎に、蛍は濡れた瞳を向けた。


「いい、よ…欲しがったのは、私、だから」


 未だ握り締められている杏寿郎の手に、頬を擦り寄せて。


「私が、欲しがったの…杏寿郎との繋がり」


 杏寿郎とは違う、熱の残る吐息を零す。


「だから、いいよ…」


 薄らと口元に笑みさえ浮かべて、全て受け入れる蛍の艶やかさを残す姿に、杏寿郎はこくりと喉を慣らした。


「う、む…」


 気の利いた言葉の一つでも投げかけてやれないのか、と頭の隅で自分を詰りながらも、そんな返答しかできなかった。
 それよりも目の前の彼女に目が釘付けで。


(参った…愛い過ぎる)


 下手をすれば、また手を出してしまいそうになる程。

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