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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第14章 燈火の 影にかがよふ うつせみの



 くたりと布団に沈む体に、深く息継ぎをした杏寿郎の指がそっと顔にかかる前髪を払う。
 はぁはぁと浅い呼吸を繰り返しながら、濡れた赤眼が朧気に見上げていた。
 見慣れぬその艶やかな姿に、どうしようもなく口元は綻ぶ。


「気持ちよく、なれたか…?」

「…ん」

「そうか。よかった」


 汗の滲む額に口付けて、力なく布団に落ちていた小さな手を握る。
 指を絡めて掴むように握れば、弱々しくも握り返してくる。
 己を負かす程の体術を身に付けた蛍に節分で負かされた時は、あんなに清々しい敗北を感じられたのに。
 その鱗片すら感じない脱力した姿に、何故かちりちりと腹の底が焦げ付くように燻る。


「だが俺はまだ気をやれていない」

「……え」


 にっこりと笑って告げた杏寿郎の言葉の意味を、理解するのに一秒要した。
 ぽかん、と惚けたようにも見てくる蛍の表情さえ、愛おしく感じる。
 その感情のままに、未だいきり立つ己の欲をゆるりと動かした。


「あっん、ま、待って…ッまだっひ、ぁッ」

「すまん、待てない。俺も蛍と共に気持ちよくなりたい」


 指を絡めた両手を布団に押し付けて、ずくずくと腰を打ち込む。
 逃れようがない快楽に、あられもなく喘ぎ感じてしまう蛍が堪らなく愛おしかった。


「きょ、じゅろぅ…ッ」

「もっと呼んでくれ…っその声を、ずっと聴いていたい」

「じゅ、ろ…ッきょじゅ…あッ! ぁ、う、でも…ッ」


 言われるがまま名を呼びながら、蛍の声が切羽詰まる。
 立て続けに打ち込まれる快楽に、体が過敏に反応しているのだろう。
 再び絶頂の予感に体を震わせ、仰け反った。


「またきちゃ…ッは、ァあッ!」

「ッ…!」

「ふぁっ? あ、なっでぇ…ッ待っんぁッ!」

「は…ッ蛍…ッ」

「ぁッあ!」


 杏寿郎の熱に翻弄され、成す術もなく絶頂の波に落ちていく。
 きつく眉を寄せたまま、杏寿郎は食い入るようにその様を見つめた。

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