第8章 美味しいご飯
『と、取ってくださいよ沖田さ~んっ(泣)』
沖田「あっはは、ちょっと待って、今とるからっ」
僕も、違う意味で目に涙を浮かべながら、
千鶴ちゃんに近づく。
『~っ(泣)』
沖田「っくく…ねぇ千鶴ちゃん、知ってた?」
『っ、え?何が、ですかっ?』
僕が突然問うと、千鶴ちゃんは
"蜘蛛、まだ取らないんですかっ?"
と言いたげな顔を僕に向けた。
そして───…
『きゃっ!?』
後ろから肩に腕を回して、思い切り抱きつく。
沖田「あははっ、蜘蛛なんて最初っからいないよっ?」
『え…っだ、騙したんですかっ!?』
沖田「うん、ごめんねっ?あまりにもつまらなかったからさぁ」
『酷いです沖田さぁ~んっ(泣)』
そう言って、彼女は泣き出してしまった。
よほど蜘蛛が嫌いなのだろう。
沖田「あーごめんごめん。ほら、泣かないでー」
涙を流す彼女の頭を、
優しく撫でてあげる。
…カワイイなぁホントに…。
そんな、蜘蛛に弱い彼女を…
よりいっそう、愛しく思ってしまった。