第8章 美味しいご飯
トン、トン、トン、トン…
リズムよく聞こえる包丁の音に耳を傾け、
僕はずっと、千鶴ちゃんの側にいる。
作るおかずが決まっているのか、
さっきから、手が止まる気配がない。
…だいぶ、良くなったんだね、傷…。
たまに、痛みを感じて顔をしかめる程度で、
さほど支障はないようだ。
沖田「…手伝おうか?千鶴ちゃん。」
そう言って、気遣ってあげても───
『あ、いえ、大丈夫ですよ。』
僕の方を見向きもせずに、あっさりと答える。
…僕は、思った。
つまんない。
沖田「……ねぇ、千鶴ちゃん。」
『っはい?』
やっぱり、見向きもしない。
沖田「さっきから思ってたんだけど、」
『はい、何ですか?』
沖田「肩に蜘蛛がいるよ。」
『えっ!??い、いやあっ!!!(泣)』
僕がそう言うと、自分の肩を見てもいないのに
叫んだ千鶴ちゃん。
半分、涙目になっている。
沖田「ぷっ、あははははっ!!!あ~面白い!!千鶴ちゃんサイコーだよ~っ!!」
その光景を見て、僕は思わず
大笑いしてしまった。