第5章 春に出会った
──数日後。
『母上~、今日のお夕飯はなにが…』
母「あら、千鶴の好きなものでいいのよ?せっかく作ってもらってるのに、ワガママ言いたくないもの。」
『…でも、たまには母上や父上の好きなものを作りたいです。』
母「……そうねぇ。…それじゃあ、夕飯はどうでもいい!!」
『ええっ!?っもう、母上ったら!!』
母「ふふ。…それより、コレを配達屋さんのところに持っていってほしいの。」
そう言った母上が
私に差し出したのは、
誰宛てかわからぬ"文"だった。
『…これを?』
母「そう。夕飯は遅れてもいいから…お願いできる?」
『でも、もうこんなに暗いのに…』
開け放たれた窓の外を見ると、
もう月が見えていた。
…これじゃあ、帰って来たころには
かなり遅くなってしまっている。
『…先に、お夕飯を作ってから行きます。』
母「…そう?じゃあ、お夕飯を先にお願いするわ。」
『はい。』
私は、笑顔で母上に応えた。