第13章 それを返せ!
沖田「"豊玉発句集"っていうんだよ。」
『ほうぎょく…?』
沖田「うん。けっこー面白いよ?」
『へぇ…。豊玉さん、ですか…』
沖田「そ。」
『…聞いたことないです、私…』
沖田「だろうね。あんまり有名じゃないから、この人。」
クツクツと喉で笑いながら、沖田さんは
その発句集のページをめくる。
沖田「面白いって言っても、全然、意味が分かんないんだけどね」
『え、ダメじゃないですかっ』
沖田「そうそう!…これとか、何だと思う?」
『…水の北、山の南や春の月……っ?』
沖田「あははっ、やっぱり分かんないよね」
どういう意味なんだろう…?
あまり頭の良くない私は、どういう意味なのか分からなかった。
沖田「まぁ、何かを思って書いたんだろうけどね。もうちょっと上手く書けないのかなー」
『ふふ、有名じゃない人って、そういうものだと思いますよ』
2人でその句集を読んだり、お団子を食べたりしていると…
いつの間にか、日は暮れかけていた。