第1章 ひとつめのお部屋-江戸川乱歩
「判ってるだろう太宰? 見せ付けてるンだよ」
「勿論。私には何の影響も有りません、が……
腕の中の姫君は中々見入る価値が有る様で?」
?
姫君?
を観ると真っ赤に成りながら、僕の腕を引き剥がそうとして居た。
「何…其の顔」
「顔…? 其れより離して下さい、よ、恥ずかしい」
「………」
悪影響(ダメージ)が、大き過ぎる。
僕としたことが、迂闊だった。
早く…帰りたい。早く、と……
僕は荷物を置いた儘彼女の腕を掴むと事務所のドアを開け放った。
「じゃあ僕等は先に帰るねェ、ばいばい」
「江戸川さん! はまだ書類の整理が一冊…」
「太宰に押し付ければ善いよ」
の腕を引いた儘、探偵社を出た。
「ら、乱歩さん、ちょっと」
此の時ばっかりは、近い社宅で善かった。
社長の計らいに感謝しなくちゃねぇ。
対して力が有る訳でも無く背も高く無い僕は、最小限を気遣い乍ら自室に駆け込んだ。
「ごめんねぇ。君が余りにも可愛いモンだから」
「はあっ……らん、ぽさん」
ドアが閉まるや否や、荒い息を整えようとする彼女を玄関の壁へと押し付けた。
其の拍子にぱさりと、被っていたベレー帽が落ちる。
「はっ…はあっ……」
「の所為だからね、全部」
「わ、私…はぁ、何か……」
私何かしましたか。とでも訊きたいんだろうね。