第4章 揺れる
僕はキャベツの千切りを作ろうとしていた。
いつものようにテンポよく切っていた。
「あ、痛いっ!!!」
思わず声を上げてしまった。
「どうしたー?祐里斗。」
僕の指には赤く血が滲んでいた。
「包丁で手を切ってしまったみたいです・・・。いつもはこんなこと滅多にないんですけどね・・・。」
僕は笑って誤魔化した。
「ちょっと待ってろ。消毒液と絆創膏持ってくるから。」
「ありがとうございます・・・。」
先輩は手持ちのバッグから消毒液と絆創膏を取り出した。
流水で切ってしまった僕の指を冷やした。
「ほら、祐里斗。指出してみろ。」
「は、はい・・・。」
ティッシュに消毒液を数滴垂らし、指にポンポンと当てていく。
先輩は絆創膏を取り出し、僕の指に貼って行った。
「よし、コレでいいや。」
僕の指にはウサギの絆創膏が貼られていた。
コワモテの先輩が可愛い絆創膏を持っているなんて、なんというギャップでしょう・・・。
思わず笑いが込み上げてしまう。
「何、笑ってんだよ。」
そう言って僕の額にデコピンする。
「だって、先輩って本当に可愛いもの好きなんだーってなっちゃって。」
「まあな。誰にも負けないね。」
「じゃあ、気を取り直して作りますか。」
「ああ、そうだな。」