第4章 風。
「・・・ひとつ聞くが、君は自分の運命を恨んだり否定したいと思った事はあるか?」
イオ「・・・はい?」
「いや、なに・・・通行人のしがない独り言として捉えてくれて構わない」
イオ「はあ・・・。
運命ですか・・・」
聞かれた質問の内容に、私は考えた。
運命ね・・・。
イオ「別に、無いですね」
「・・・ほう。
何故、そう断言出来るのかな?」
イオ「はい。
運命って、神様とかが前もって決めてたその人の行動とかのアレですよね。
自分の意思でやって、こうなる運命だったーとか後付けしたような事言われても・・・実感が沸かないって言うか」
「・・・なるほど・・・」
イオ「私運命とか信じてないので。
なんて言うか、運命とか神様って一番逃げ道な気がするんですよねー」
いつも通りに、思った事をそのまま口にする。
もし、仮に私のズレてる価値観を持ってるのが運命って言われても「ふーん」としか思わないし。
「・・・ふふ・・・。
やはり君は面白い・・・」
イオ「?って、・・・え・・・」
何やら前から私を知っているような言い方をする男の人。
まあ初対面だしそれなりに人2人分くらいの距離開けてた。
でも、瞬きした次の瞬間にはそんな空間も関係なくなった。
いつの間にやら私は男の人から抱き寄せられていて、視界は男の人の髪の色でいっぱいになった。
・・・チクッ
イオ「、っぃ・・・!」
「ん・・・っ・・・・・・」
右の耳の、すぐ下。
久々に体感するこの痛み。
・・・言わずもがな、吸血されてる時のそれだ。
と言う事は、えっ。
この人・・・ヴァンパイア・・・?
「・・・・・・やはり、か・・・」
イオ「・・・え、ぁ・・・えっ?」
「久方振りに美味なものを口に出来た・・・礼を言わせてもらおう」
イオ「あー・・・ど、どういたしまして?」
「では、私はこれで失礼するよ。
・・・君が思い出したら、また会おう」
・・・ざあぁっ・・・!
思い出したら?それってどう言う・・・と聞こうとしたら、タイミングよく強い風が吹いた。
思わず反射的に目を閉じる。
風が止んで目を開けたら、男の人は居なくなってた。