第4章 風。
イオ「いつもみたいに、私が思ってる事をそのまま言ったんだよねー。
いやあ、あの時の朝ボのスタッフさん達からの視線は怪訝だったわー」
アズサ「・・・・・・なんて、言ったの?」
イオ「なんて事はないよ。
生き甲斐とかそう言う希望に満ち溢れてるジンクスで歌手業はやってない。ただ、形のない歌を自分で創って・・・誰かに聞いて貰って記憶の片隅にでも覚えてくれてればそれでいい」
アズサ「・・・・・・」
イオ「形のある物はいつか壊れちゃうけど、歌は形のないものって思うから。だから歌ってる。
って言っただけ」
アズサ「・・・なんか・・・イオさんらしいね」
イオ「あら、嬉しい事言ってくれるねー」
アズサ「それで・・・その事がきっかけで?」
・・・そゆ事。
その発言がきっかけでファンも本当にコアな人に限られるわ、朝ボのスタッフさん達を通じて業界に溝出来るわ・・・とどのつまり、少し頭おかしい奴って思われ始めた訳だよ』
言った事はもう過ぎた事だし、別に後悔とかはしていない。
自分の思ってる事をそのまま口にしただけ。
ただそれだけの事なのに、私は“ちょっと頭のおかしい顔出しNGのシンガーソングライター”って言うレッテルみたいなのを貼られた。
アズサ「・・・そう・・・だったんだ・・・・・・」
イオ「うん。
まあ、なんて言うんだろうねー。
実は歌手業に命をかけてる訳でもないんだ」
アズサ「・・・?」
イオ「好きだからやってるだけなんだよね。
メロディラインを並べて歌詞を考えてつけて、それに表したい感情を乗せて歌う。それが私にとって趣味であって好きな事なんだ」
アズサ「・・・好きだから・・・」
イオ「そ。
この仕事は趣味でもあって、好きだからやってるだけなんだ」
世間の言葉や目を気にするのが嫌だから、思った事をそのまま口にしただけ。
それだけ。
なのに、私は一際ズレてると他から認識された。
人間ってのは単調な生き物じゃないなーとつくづく思った。
いや私も人間なんだけど。
・・・うーん、でも。
こんな私だから無神兄弟とこうやって付き合い出来てるのかもしれない。
そう考えたら、自然と笑えた。