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彼女が□□した日。

第4章 風。


事務所の中を歩きながら喋るのもどうかと思い、私達は大通りの喫茶店に入った。
まだ日中なだけあって混み具合はまあまあだ。


私はカフェラテとティラミス、アズサくんはコーヒーとラスクを頼んだ。
・・・ちなみにアズサくんは辛い物が好きなようで、テーブルにあった七味唐辛子をラスクに満遍なく振りかけている。




イオ「んー、何から話そうかな。
・・・そもそもの始まりが、とあるラジオ番組だったんだよね。
朝ボって、知ってる?」

アズサ「朝ボ・・・?
それって・・・コウが、やってる?」

イオ「うん、その朝ボ。
あれさ、元々のメインパーソナリティはコウくんじゃなかったんだ。コウくんがやり始めたのは今年の4月からだし」

アズサ「そうなの・・・?」

イオ「うん。
最初のメインパーソナリティは、実は私だったんだよねー。放送が始まった3年前の6月から9月末までの短期間。
まあ、言わば初代メインパーソナリティかな」

アズサ「3年前・・・。
コウが、アイドルをやり始めた時期と・・・一緒・・・」

イオ「あれ、言ってなかったっけ?
コウくんと私は同期だよ」

アズサ「・・・そう、だったんだ。
じゃあ・・・イオさんが、シンガーソングライターになって最初の仕事・・・なんだね」

イオ「ん、その通り。
最初の頃はラジオってのに慣れてなくて、ボソボソ喋ったりしてたなー。
まあ、初めての仕事だし私なりに頑張ってたよ。
・・・でも、その“私なりに”が駄目だったんだ」




懐かしいなーと思いながら、その時の事を思い出す。って言っても3年前だからまだ最近か。




イオ「私が担当してた頃の朝ボって、まだ声優さんとかのゲストを招くコーナーとかはまだ無かったんだ。時事ネタとかを行き当たりばったりで喋ったり、リスナーさんからの質問に答えていく・・・質素って言うかシンプルな感じ。
ある時ね、リスナーさんから歌手業をしていての生き甲斐はなんですか?って質問がきたんだ」

アズサ「・・・生き甲斐?」

イオ「そ。
世間一般で言えばファンからの声援ーとかスタッフ関係者と一丸になって作り上げてくステージ、とかの模範的な回答が多分丸く収まったんだろうね。
けど・・・ほら、アズサくんも知っての通り私って他の人よりズレてるじゃん?」
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