第4章 風。
イオ「・・・わーかーりーました。
絶対に顔を出したくないって訳じゃないですし・・・いいですよ。これからは普通に、普通のシンガーソングライターとして活動しますよ」
長社「おお、解ってくれたんだね!」
イオ「でも、本名は伏せてください。
本名だけは知られたくないので芸名でお願いします」
長社「OK、OK!
そこら辺は任せておいてくれ、君の本名を知っているのは私と無神くんだけだからね」
あ、そうだったっけ。
他の長社事務所に所属してる人達と違って、私だけマネージャーが居ない上に本名教えてるのはコウくんと社長だけだった。
あー、そうだそうだ。
長社「さて、君も顔出しを快諾してくれた事だし・・・手始めにこの新曲のMVを撮ろうかな」
イオ「おおう、早速ですか」
長社「もちろん。
きみがせっかくやる気になってくれたんだ、それにファンがお待ちかねの新曲だしね」
イオ「あー・・・そりゃまあ、半年ぶりの新曲ですからね。
それじゃ、基本的な構成とかもろもろはお任せしていいですか?
なにぶんきっちりしたMVとか撮った時無いので」
長社「うん。任せてくれたまえ!
・・・さて、久々に忙しくなるぞ・・・!」
いつになく活き活きとした表情の社長。
ある程度決まったら社長から連絡をくれるとの事で、それまでいつものようにゆっくり待ってても良いらしい。
私とアズサくんは社長室を後にして、事務所の廊下を歩いた。
アズサ「社長さん・・・嬉しそう、だったね・・・」
イオ「ま、最近ビッグニュースみたいな情報がうちの事務所には無かったからね。
悪口叩かれまくってる私を応援してくれてる数少ない人だから、うちの社長」
アズサ「・・・どうして、イオさんは・・・悪口言われてるの?」
イオ「ん?」
アズサ「イオさん・・・歌・・・とっても上手だし、俺みたいなのと・・・一緒に居てくれるし。
それに・・・ヴァンパイアって知っても、普通に喋ってくれてる・・・。
それなのに・・・どうして?」
心底解らない、とでも言いたいのかアズサくんは首をかしげてそう聞いてきた。
・・・あー、そっか。
コウくんは私が良く思われてない事の理由を知ってるけど、アズサくん達は知らないんだっけか。