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彼女が□□した日。

第1章 虹。


ザアザアと止まない雨の中、折り畳み傘を差しながら私は帰路を歩いた。


スニーカーなんて外に出て5分くらいしたらもうずぶ濡れ。靴下ごと濡れてるからなんか気持ち悪いけどどうでもよくなった。



今は夜。
でもこの神無町は夜も賑やか。


雨の音だけだったら良かったのに、不協和音が重なってて黙れって言いたくなってくる。言わないけど。
傘から落ちてくる雫がネオンを映して綺麗だからいいや。


こんな時はなんか考え事でもしよう。

うーん、何がいいかな。




『あ』




神無町の中心街。
ビルみたいな建物にでかでかと設置されてるディスプレイ。

有名な香水の宣伝が流れた。

金髪。
色白な肌。
水色の目。
どこか幼げ残ってる声。


無神クン。

本名、無神コウ。クン。
私とほぼ同時期からアイドル活動を始めた。
私なんかよりもずっとずーっと人気のある、ちまたでも割と名前が知れてる人気アイドル。
世の女の子ならぽーってなる。頬を染めてぽーってなる。
なんか時々目の色変わる時あるけど、あの色も好き。

出会った当初はそんなじゃなかったけど、去年くらいから仲良くなった。
敵対心?みたいなのがあった。
でも今は業界で唯一私を心配してくれる。さっきだって放っとけばいいのに、自分のマネージャーに頼んでまで私を送ってくれようとしてたし。

私の事をヒメ猫ちゃんとか言ってるけど、無神クンこそ猫っぽい気がする。




イオ「ふっふー、私も頑張んないとねー」




当たり前の事だけど、宣伝だから無神クンが映ってたディスプレイは別の映像に切り替わった。


無神クンは人気売れっ子。
一方の私は、しがないシンガーソングライター。
深い意味は特に無いけど、顔出しNG。

無神クンとは真逆の、言わば影の売れっ子。
人気じゃなくて、売れっ子。


全くの無名じゃなくて、私の歌を本当に好きな人は好きな感じ。
手っ取り早い話が、隠れファンが多い。



と。
あれこれ考えてたところで雨脚(あまあし)が本格的になってきたから私は止めていた足を進めた。
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