第1章 虹。
side コウ
イオ「虹!
綺麗だよ!」
いつか見たキラキラした笑顔で、ヒメ猫ちゃんは嬉しそうにオレにそう言ってきた。
ああ、虹か。
いや、虹も虹で綺麗。
でも・・・虹よりも、近い距離にあるヒメ猫ちゃんの笑顔の方が眩しかった。
とくん・・・
・・・また、だ。
ヒメ猫ちゃんの至近距離の笑顔に、胸の中で何かが跳ねた。
コウ「・・・、・・・うん。綺麗だね」
イオ「だよねー!
最近全然見てなかったからさ、テンション上がるわー」
コウ「そ、そっか」
イオ「私ねー、雨の日って割と好きなんだよ。
キラキラしてるし、身体濡れちゃうけど雨の中で歌うとストレス解消になるし。
それに、やんだら虹見れるし!」
コウ「ヒメ猫ちゃん、虹好きなの?
なんか意外」
イオ「だってコウくんみたいなんだもん」
コウ「え?」
思いがけない言葉に、オレはキョトンとした。
虹が、オレみたい?
イオ「虹の色って、なんかコウくんの目の色と似てて好き」
コウ「・・・!
・・・目の色、って・・・」
イオ「コウくん、たまーに右目の色変わるっしょ?
ピンクって言うか赤って言うか・・・私それ好きだよ」
え。
嘘、オレ・・・ヒメ猫ちゃんの前で右目の力使ったっけ。
て言うか、好き?
ヒメ猫ちゃんが?
この、目を?
コウ「・・・・・・嘘、ばっか」
イオ「ん?」
嘘だ。
そんなの、嘘だ。
オレの目を、綺麗って思うなんて。
嘘に決まってる。
コウ「色が変わる目なんて、気味が悪いだけでしょ。
ヒメ猫ちゃんも本心は気味悪がってるんでしょ?」
イオ「ううん、全然気味悪いなんて思ってないよ」
コウ「・・・っ、言葉ではなんとでも言えるだけじゃん・・・!」
すぅ・・・
嘘に決まってる。
強くなりかけてる口調を抑えながら、それじゃあ本当はどう思ってるのか見てやろうと思って右目の色を変えた。
ほら、変わったよ。
気味の悪い色に。
同じなんでしょ。
普段はヘラヘラしてオレと話してるけど、内心は罵声を呟いてるんでしょ。君も。