第5章 マネージャー
「母さんごめん。先に柚子っちと話させて...」
何よりも、柚子っちの誤解を解くことが、オレが、今、することだ。
「柚子っち、聞いて」
正直、母親の前で話したくないけど、今すぐ解きたいから、ここで言うしかない。
「私...いいんだよ?カモフラージュでも...ただ、涼太君の傍にいたい...」
なんでいつも柚子っちはそうなんスか...。
だから...余計に、堪らなく愛しくなる。
「確かに、コクられた時は...ちょっと前まではそうだった。でも今は違う。...言ったじゃないスか、ちゃんとスキだって...愛してるって...何回も言ったじゃないスか......もっとオレのこと信じてよ...」
頼りない声になってしまう...。
やっぱ、言葉だけじゃ伝わらないっスか?
どうすれば、ちゃんと全部伝わるんスか...?
オレ...ホントに本気で柚子っちのこと、愛してるんスよ。
俯いてる彼女の頬に手を添えて、ムリヤリオレと目を合わせる。
見つめられただけで、紅くなる彼女。
ソレを見れば、いつだって、彼女の本当の気持ちがわかる。
オレはこんなに柚子っちの気持ち、わかるのに、どうして...柚子っちはオレの気持ち、わかんないんスか?
オレって、そんなわかりにくいっスか?
軽く見えるっスか?
...まぁ、軽いのは、否定出来ないけど...。
オレの軽さは、柚子っちが一番わかってる。
でも、オレが変わってから一番近くにいて、今のオレのことを一番知ってるのも、柚子っちなんスよ。
「柚子...ちゃんと見て、オレのこと...オレの気持ちが見えるくらい...」
「柚子...って...急に...」
母親はキッチンの方に行ってくれた。
オレ達はリビングにいるけど、遮るものがないから、聞こえてるだろう。
柚子...柚子はいつもオレのことあんまり見てないっスよね...オレじゃない、"ナニカ"、見てるっスよね...何、見てるんスか?
.........
もしかして...葵クンっスか?
...オレを...葵クンに重ねてる?