第5章 マネージャー
彼の顔は、余裕そのものだった。
最初のあの声とか、不意打ちだったからなのかな...。
ホントは気持ち良くないの、わかってるよ。
なのに、そんな風に言ってくれる黄瀬君は、ホントに優しい人だね。
黄瀬君のこと、口で気持ち良く出来ないなら、もう...挿れて貰うしかないのかな。
彼のモノからそっと唇を離して、起き上がった。
「どうしたんスか、柚子っち?」
彼の首に腕を回し、抱き付く様にして、耳元で囁いた。
「挿れて...」
「は...?何言ってんスか、柚子っち!そんなこと出来るワケねぇじゃねぇスか!怖いんでしょ?今は、絶対イヤっスよ」
なんでそんな頑ななの?
私の身体はもう...汚れてるんだよ?
......確かに怖いのを無理矢理押し込んで、シようとしてる。
でも、それは...シたいって思えるのは、黄瀬君だからなんだよ?
「オレ、ちゃんと待てるっスから...だから、自分を大事にして?柚子っち」
しっかりとした声で言ってくれる彼。
「でも...気持ち良くないんでしょ?......私がヘタだから...」
「もう、何言ってんスか。オレ、ちゃんと気持ちイイって言ったでしょ」
「だ、だって!!全然気持ち良さそうじゃないんだもんっ!!」
もう、逆ギレかな...いや、意地張ってるだけかな。
...ごめんね、黄瀬君。こんな私で...。
彼はこんなにも優しい人なのに、彼女の私は...ただ彼を繋ぎ止めておきたくて、無理して、意地張って、彼を困らせてる。
......イヤな彼女...。
ソレに気付いて、自嘲気味に笑った。
「ははは...」
「?...柚子っち?」
項垂れる様に下を向くと、先程までの大きさが嘘だった様に、縮こまり、垂れ下がっている彼の局部が見えた。
...萎えちゃった?
私があまりにもダメだから?
「うっ...ふっんっ...ぅあ...」
「柚子っち...」
涙が出てきて、嗚咽を洩らす私を心地いい温もりが包み込んだ。
爽やかな石鹸の香り。彼の...黄瀬君の香り。
いや、正確には香水の香り。
カモフラージュ彼女だった私には、彼の本当の香りなんか知らない。