第5章 マネージャー
「柚子っち...勝ってないスけど、ココにキスしてもいい?」
真上にある黄瀬君の瞳に見つめられ、そっと唇を撫でられる。
「う、うん...いいよ。して?」
懇願する様に、承諾した。
...私もして欲しかったから。
ゆっくりと彼の唇が下りてくる。
それを見て、目を閉じた。
生暖かく、柔らかいものが唇に軽く触れ、すぐにリップ音とともに離れた。
軽く触れるだけの優しいキス。
それが今は、もどかしかった。
「...もっとして。もっと...激しく」
腕を彼の首に回し固定して、激しく彼の唇を奪う。
こんなことしてしまうのはきっと...彼がまだ、前を向ききれていない様に見えるから。
ぴちゃぴちゃといやらしい音がする。
その音をたてているのは、私。
黄瀬君はまだ、私のその行動に戸惑ってるみたい。
舌の動きが、噛み合わない。
彼がそんな私を無理矢理剥がした。
「はっ...はぁはぁ。...柚子っち急にどうしたんスか?」
「はぁ、はぁ...。イヤ、かな?女の人がガッつくの...」
激しいキスで薄くなった酸素を求める様に、息する2人の熱い吐息が、お互いの顔にかかる。
それすらも全て吸い込んでしまいたい程、愛おしい。
「いや、違うんだけど...逆に嬉しいんだけど...。驚いたっていうか、いつもの柚子っちじゃないなって...」
「わ、私だって、こういうことしたいって思う時、あるんだよ...」
私はいつも、黄瀬君が弱ってる時、何もしてあげられない。
...支えたいって思うのに...なんて言葉をかけたらいいかわからなくて...。
結局私は、大切な人のことも支えられない、弱虫のままなのかな......。
「言葉では何も言ってあげられないから...少しでも、黄瀬君が安らぎを感じられる様にって...思ってるんだけど......。確かに私がしたいってのもあるんだけど...」
「ハァ...なんなんスか、もう。柚子っちのことしか考えられなくなるじゃないスか...」
「うん、今は、私のことだけ考えて...?」
今度は、お互いを求め合って、深いキスを交わした。