第5章 マネージャー
「あのね、黄瀬君...」
「ん?なんスか」
私の顔を覗き込んで、首を傾げる愛しい彼。
今は彼の家に着いて、ベッドに2人並んで座っている。
私はある意思を伝える為に、口を開いた。
「私、バスケ部のマネージャーになろうと思うの...」
「え?...ホント?なってくれるんスか?」
「あ、うん。イヤじゃない?」
「なんで?むしろ、すげーウレシイっスよ?」
きょとんとした顔で見つめられて、戸惑った。
中学の頃とは違う。
今は、“黄瀬涼太の彼女”というのがあり、本気さが伝わらないんじゃないかと、ずっと思っている。
彼氏がいるから、マネージャーをやるという風に、思われるんじゃないかって、怖くてずっとなれなかった。
それと、前は黄瀬君との関係のこともあり、人前で彼と一緒にいることを避けてた。
彼の為にも一緒にいる時間を減らしてた。
確かにまだ、人前で彼と一緒にいる時間を減らそうと思う時もある。
でも...あの最高のチームを支えたいという思いの方が大きくて、監督や主将に話す前に、黄瀬君に言おうと思ってた。
もし、黄瀬君に反対されたら、その思いを消そうと考えてた。
...でも、その必要はなかったみたい。
「よかったぁ...!」
塞き止めてた水を一気に流して貰えたみたいに、嬉し涙の様なものが笑顔と一緒に溢れ出てきた。
黄瀬君は私のその反応に驚いたのか、目を丸くした。
そのあと急に、顔だけに収まらず、耳まで真っ赤にした。
「どうしたの?顔、赤いよ。具合悪い?暑い?」
クーラーが効いてて涼しいけど...やっぱり、具合悪いのかな。
「いっ、いやっ!違うっス!!...そういう意味じゃなくて...そのっ...今の顔...すげー可愛かったっていうか......」
次は私が赤くなる番だった。
黄瀬君は必死に腕で顔を隠してる。
ところどころ見えてるけど...。
「あー!!もう、我慢出来ねぇっス!」
彼はそう言って、私の両肩を押して後ろに倒した。