第3章 コワイ(過去編)
ドンっ!!
大きな音が虚しく響いた。
「あ、おい...?葵?......返事してよー葵っ!!」
何度、葵の名前を呼んでも、1度も返事が返ってくることはなかった。
葵は即死だった。
彼は、短過ぎる7年の人生に幕を降ろした。
私の所為だ...。
私の所為で葵が死んだ。
ずっとずっと死にたかった。
葵じゃなくて、私が死ぬべきだったんだ。
私は、あの日、冷たくなった彼を抱き締めて、何度も何度も彼の名前を呼んだ。
ごめんねごめんねといつまでも繰り返した。
認めたくなかった。
もう葵がこの世にいないなんて...。
あの向日葵の様に、温かい笑顔が見れないなんて...。
もう彼の大好きな声が聞けないなんて...。
葵は私の全てだったんだ。
何がなくなったって、葵さえいてくれれば何もいらなかった。
何よりも大切な大切な、弟だったんだ。
「ごめんね、ごめんね...私の所為で...」
「柚子、あなたの所為じゃないわ...」
「そうだぞ。葵もお前が生きててくれてよかったと思ってる筈だ。...葵の分まで生きてやれ...」
お母さんとお父さんの声なんて聞こえなかった。
...誰の声も聞こえなかった。
現実味なんかなくて、1度も涙が流れることはなかった。
いつまで経っても葵が隣で笑ってくれてるんじゃないかって、思ってた。
私はその日から、ただ動く人形みたいになった。
いつも通り、部活も学校も行って、ただ勝手に過ぎていく日々に、身を任せていた。