第2章 モドル
「柚子っち、柚子っち!」
「ん?」
黄瀬君が私の名前を呼んでる。
それが夢じゃないと気付き、目を開けた。
「もう昼っスよ?メシ、食わなくていんスか?」
「え、え?黄瀬君、なんで...?え?ん?」
もう黄瀬君が私に、話しかけることなんて、ないと思ってた。
......だから、ゆっくりと動き出した脳が混乱してる。
「オレ、どんな理由があっても諦めねぇスよ?柚子っちがオレと、ヨリ戻してくれるまで、アタックしまくるっスからね?覚悟してて欲しいっス〜!!」
............あははは。
黄瀬君らしいっス...。
でも、やっぱり、すごく嬉しい。
そんなに私を想ってくれてるの?
現役モデルから、アタックされまくられるんなら、本当に、覚悟しとかなくちゃね。
「ささっ、弁当持って中庭行くっスよ〜!またイロイロ、アーンしてもらわなくちゃっスね〜」
「あっ!ちょっと待って......もう」
私のお弁当を持って、手を引かれる。
......女子達の視線が怖いね......。
そういえば、あの時の黄瀬君の接し方は、私との距離を縮めようとしてくれてたって、ことなんだね。
...なのに、私...
あんな最低な勘違いして...。
黄瀬君はそんな人じゃないのに...。
「黄瀬君、この前は、本当にごめんね...」
私の手を引きながら、歩幅を合わせて歩いてくれている、黄瀬君の後ろ姿を見つめて、謝った。
「ん?何がスか?」
「黄瀬君が優しく話しかけてくれた時のことだよ」
振り向きながら、コテッと小首を傾げる君は、本当に、大きなチワワみたい。
「別にいいスよ。今までがあんなんだったから、急に態度変えたら、そりゃ誰でもからかわれてるんじゃねぇかって思うスよ!」
「ふふっ、ホント、今にもK.O.されちゃいそうっ」
「何のことスか、柚子っち?」
「ううん、こっちの話!」
「?」
?、いっぱい浮かんでるね、黄瀬君。
私は君のことが好きだから、今にもヨリ戻しちゃいそうってことだよ。