第2章 モドル
「柚子っち...その...オレ、えっと...そのっ...あーもう!オレらしくねぇっス!!」
いきなり大声を上げたオレに柚子っちは、肩を大きく震わせた。
「あ、ごめん...いきなり大声出して...。いや、だからその...オレ、柚子っちのことが好きなんス...」
い、言えた。
本気になるとこうなってしまうんスね。
どうしようもなく愛しくて...
どうしようもなく苦しい...。
「...だからオレ...柚子っちと...キスしたいんス...もう、遅いっスか...?」
ゆっくりと柚子っちは顔を上げて、オレの目を見つめた。
沢山の涙が頬を伝っていて、目にも沢山の涙を溜めた、その瞳は...とても愛おしく感じてしまう。
「今まで、ごめんっ...いっぱい...いっぱい酷い言葉、言って...ごめんなさい...。やっぱり許してもらえることは出来ないっスよね...。でも...オレに何か言いたくて、ここに連れて来たんスよね?教えて欲しいス...」
「んっうっ...くっ」
柚子っちは、必死に手で口を抑えて、声が漏れない様にしている。
オレはその手を取って、強く握り締めた。
「声、我慢しないで...。ここには、オレしかいないっス。もし誰か来ても追い返してやるっスから。誰にも聞かれたくない話があるんでしょ?」
柚子っちはオレからそっと離れて、下を向いた。
......柚子っちはいつも、あんまりオレに顔、見せてくれないスね。
柚子っちは、ゆっくり深呼吸して、話し出した。
「わ...私も、黄瀬君が好きだよ...。好きって言ってくれてありがとう...。でも...私はもう...よ、汚れちゃった、から...黄瀬君の傍には、いちゃいけないんだ...」
どういうことスか?
...ヨゴレチャッタ...?
意味わかんねぇス。...柚子っちはいつだってキレーじゃねぇスか。
汚れてるのは、オレの方っスよ...?
「だからもう、近寄らないで...。沢山のいい思い出をありがとう。.........幸せだったよ!」
その泣きながら笑う顔は、今まで見てきたどんな顔よりも...幸せそうで悲しそうだった...。