第2章 モドル
柚子っちは、屋上へと向かう階段を昇ろうとしたが、引き返して、廊下を進んでいく。
もしかして、あの時のことを思い出したんスか?
...オレが他の女とセックスした時のこと。
後悔したって今更っスね...。
柚子っちはそのまま進んでいき、保健室の前で立ち止まった。
ここは...初めて柚子っちに、本当のオレを見せたとこ...。
今は、まだ朝だから、センセイも職員室にいるだろう。
2人きりだ...。
何か...大切な話があるんだろう、誰にも聞かれたくない、大切な話。
ドアを開けて中に入っていく。
オレが入ったのを見て、柚子っちはカギを閉めた。
「柚子っち、その...何か...っ!柚子っち!?ど、どどどうしたんス!?」
柚子っちが急にオレに身体を寄せた。
...やっぱり何かあったんスね......。
柚子っちはオレにこんな風に触れたりなんかしない。
...しかもフったばっかりの相手なんかに...。
「...くっ、うっ...ふっ...」
え?
柚子っち、泣いてる...?
オレの...せいスか?
オレにこんな風に、縋る様に泣く柚子っちは知らない。
全部が初めて過ぎて...
知らない柚子っちを知れた様で...
嬉し過ぎてしょうがない。
柚子っちは、今、こんなに弱々しいのに...。
見たことがない程。
「柚子っち、その...今は恋人同士じゃないスけど、前、ここで出来なかったこと...していいっスか?」
何言ってんだってのは、自分でもわかる。
こんな状況なのに...。
でも、何故か、今とても、オレに縋る様に、泣いている女の子を見て、愛おしさが溢れ出してしまって、どうしようもないんだ。
今すぐ好きって言わなきゃ...!
今すぐ恋人同士になって、柚子っちの彼氏として、溢れてしまいそうな愛をあげたい。
オレの想いをつっかえさせる、喉を取ってしまいたい。
...取ったら喋れないか。
あーもう!!言えよ、オレ!
こんなのオレにとっちゃ、朝飯前のハズだろ!?