第7章 慟哭の夜に
メンバーたちも、
そのことには、触れない。
腫れ物に触る....っていうのとは違い、
誰もが、
下らない記事のことなんか、
もう、忘れているんだ、
そんなスタンスでいてくれることが、
どれほど智くんを救っていたか...。
いつもと変わらず...。
同じように接するメンバーの、
当たり前の優しさと、
自然な空気感の中、
智くんも、
表向きは、
元気を取り戻しつつあるように見えた。
俺とふたりの時も、
他愛もない話をし、
穏やかな時間が流れ、
当たり前に側にいるという感じで...。
俺と智くんの同居生活は、
自然の流れのように続いていた。
その時期、
智くんは、ドラマの主役をしていて、
忙しかった。
かなりシリアスな内容のそのドラマは、
彼とダブル主演の斗真とふたりの、
迫真の演技が、
話題になり、
視聴率もよかった。
表向きは、
いつもの智くんに戻っているようだった。
でも、
まだ、彼はひとりで眠れないんだ。
夜になると、
言い知れない不安に押しつぶされそうになるのか、
俺は、
毎日、彼の背中を擦りながら、
この震えがなくなるのを待ちながら、
智くんの寝息が聞こえてくるのを、
黙って待っていたんだ。