第6章 運命の深い渦
飲み物が運ばれて、俺たちは乾杯した。
「雅紀に誘ってもらって、よかったよ~。
来る前は、正直期待してなかったけど、
すげ~いいとこだしさ…」
すると雅紀は嬉しそうに、
「翔ちゃんがそう言ってくれて、よかった。
連れて来た甲斐があるよ」
「まあ、運転してたのは俺だけどね…」
それには、彼も申し訳なさそうに、
明日は自分が運転すると息巻いた。
…いいんだよ。ホントは。
雅紀の寝顔、堪能させてもらったから…
まあ、それは、言わないけどね…。
「このアワビ、ヤバっ!超新鮮!生きてる!」
「ホントに!?じゃ…、
あ~ん❤」
「マジかよ…自分で食えや~」
「早く!…あ~ん❤」
俺は、照れながらも、彼の口にアワビの刺身を入れてやる。
その瞬間…。
襖が開いて、仲居さんが松茸入りの土瓶蒸しを運んで来た。
雅紀の口に、
俺の箸が入っているのをちらっと見たが、
そこは、目を反らし、スルー…。
…赤面する2人…。
そこ、むしろ、突っ込んでほしかったわ…。
……
フォローしたくても、言葉が出ない俺に、
雅紀は、
「このアワビ、すごく大きいですね~」
と…、
『あ~ん』で食べさせてもらったのが、アワビだと、彼女に報告した…。