第33章 Discuss〜一歩踏み出すために〜
昼過ぎから、取材とインタビューの仕事が入っている。
移動車の中で、相手のアスリートの最近の成績や、雑誌のインタビュー記事などに目を通す。
智の様子が気にはなっていたけど、そこはちゃんと仕事に気持ちを向けないとね…
沈んでるとか、悩んでるとか、
そんな感じじゃないから…まあ、気にし過ぎなのかもしれないけど…
何しろ、あの朝以来…
『ちゃんと考えるから』
そう宣言した日から、智は全くその件について触れて来なくなった。
気になって仕方なかったけど。
夜の方も…まあ、なんなら朝も…
↑朝もかよ…(-_-)
普通に今まで通りにあったし…
ちゃんと智も楽しんでエッチしてたから。
悩んでいる横顔も、
不安そうな瞳も、
本当に全く見せなくなった。
それが逆に俺を不安にさせていた。
『考えるから』そう言われてしまったから、
俺から、そのことを聞くのはルール違反な気がして…
でも智…
お前、何考えてるんだよ…
「櫻井さ~ん、着きましたよ」
「あ、おっけ。」
車はその日の取材が行われる、ホテルの地下駐車場についていた。
ホテルの一角を借りてのインタビュー。
オリンピックや試合の関係で何度も取材させてもらっている彼に会うのは久しぶりだった。
「よし!行くか!!」
自分のモヤモヤを振り払うために、両手で頬を叩いてから車を降りた。
……智を信じるしかない。
今の俺にできることは、それだけだから…