第32章 turning point~転機~
【智side】
朝の柔らかい光のせいだけじゃない。
いつもよりもずっと優しい眼差しで俺を見つめる翔ちゃん……
当たり前だと思ってた。
こんな時間が、ずっと続くって…
まあ、終ってしまうわけではないし、
終わらせるつもりは微塵もない…
けど。
『俺が俺らしくいる…』
あんまり考えたことなかったけど。
翔ちゃんは考えてくれた…
すごくすごく、
考えてくれた……
仕事を少し減らして貰って、
家で翔ちゃんを待ってることは、全然苦でもなかったし、それが幸せだって、そう思っていたけど。
…………そうじゃなかったのかな?
時間が経つのも忘れて、
暗くなってたことさえ気付かずに。
夢中で描くことに没頭していた。
あんな時間を、
『充実』と呼ぶのだとしたら。
今の俺は、その頃とは違っているのかもしれない。
ニノが気付いてたこと…
自分じゃ分かんなかった。
自由な時間…
何にも縛られない生活…
翔ちゃんと結婚する以前に、
嵐になって、こんな風に『国民的アイドル』なんて呼ばれる前から…
自由なんかなかったんだ…
だから、こんな風に自分のこと、
ちゃんと考えたこともなかったし、
見つめ直したこともなかった。
だからきっと、
これはいい機会なんだ、と…
そう前向きに考えられるようになったからかな?
今まで見えなかったものが、
見えてきた……
そんな気がする。