第32章 turning point~転機~
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………
「おはよ」
「あ、おはよ。翔ちゃん
玉子焼けてるよ〜」
「あ、うん…顔洗ってくるわ…」
「お味噌汁、温っめとくね♪」
…………濃厚に愛し合った日の朝の、ごく当たり前の景色…
俺と智の日常の風景…
長年連れ添った夫婦が、
『互いの存在を空気のようだ』
なんて言うよな。
それって、実は凄く幸せなことなんかじゃいかな…?って、最近よく思う。
元々は他人で、
違う世界で育ってきたもの同士が、
寄り添って生きているうちに、
お互いを空気のようだと感じるんだ……
それって実は、
奇跡なのかもしれない。
そんな相手に出逢えることが……
「美味し??」
「うん、美味し♥️」
「んふふふ(*^^*)」
智が顔をクチャクチャにして笑ってる。
新潟から帰ってきてから、
ずっとギクシャクしてたから…
まあ、俺のせいではあるんだけれど…
抱き合ったのも、あの日以来だし。
何か。
俺たちのことについて話そうと思うけど、またあんな空気になると思うと、尻込みしてしまう…
でも、あのままほっとくわけにも……
「翔ちゃん、俺、ちゃんと考えるから」
えっ?
「俺たちのこと。
翔ちゃんが考えてくれたこと、
俺も一生懸命に考えるからさ。」
「さとし…」
不覚にも目の奥が熱くなった。
……朝から泣かすなよ…