第32章 turning point~転機~
今は何も考えないで…
欲情に流されてしまいたいんだ
見えない未来も、
迷いの深い沼も、
息が苦しくなるくらいの不安も、
今は…
今だけは……
「智…愛してるよ…」
翔ちゃんの顔が、ゆっくりと近付いてきた。
黒目勝ちの、綺麗な二重…
ずっとずっと、
すぐ側で見てきた。
子どもだったころから、
嵐になる前から、
ずーっと、ずっと。
大好きなつぶらな、瞳…
「…おい」
「ん??」
「ん?じゃね~よ。いつまで目開けてんの?」
「……ずっと開けてる…」
「はあ~?閉じろや~(^^;」
そう笑いながら離れようとする翔ちゃんの首根っこを掴んで引き寄せた。
「いいじゃん!見てたって…減るもんじゃないしさ」
「いいけどさ~…。
だって、ムードねぇ…んっ」
俺の方からぶつけるように口づけた
ごちゃごちゃ言ってんなって。
そういう事。
身体で示してやるよ。
ホントは、瞬きだってしたくない。
どんな翔ちゃんも、ずっと見ていたいんだ…
それが当たり前にあるんだって疑いもしなかったから、ちゃんと見てない時もあったもん!
俺のこと、片時だって忘れないように、染み付けてやるんだ…翔ちゃんの身体と目と…心に…
ムードなんかすっ飛ばして捻じ込んだ舌先を、
翔ちゃんが迎え入れて絡め取ってくれた