第6章 運命の深い渦
俺の運転するレンタカーで、
世界遺産の平泉を廻り、
相葉くんは俺の説明に、
ふ~ん、だの、
へぇ~、だの、
適当に聞こえる相槌を打っていた。
まあ、
それも想定内だけどね…。
でも、冷麺にはいたく感動していたし、
わんこ蕎麦も、あの細い身体に、
どこに入ったの?
って言うくらい、食べ、
そして、車の中はというと…
すっかり爆睡中。
いいけどね…。
俺は、赤信号の合間に
隣で無防備に可愛い顔で眠る彼を、
こっそり盗み見ていた。
彼の親父さんの知り合いがやっている、
という温泉旅館は、盛岡から山あいへ向かった、
温泉地の一角にあった。
『隠れ家』というに相応しい、
林の中にひっそりと佇む、
品のいい宿だった。
車寄せに車を着けると、
番頭さん、って言うのかな、
割りと年輩の男性が、
「いらっしゃいませ。お待ちしていました。
相葉さま。」
と、恭しく迎えてくれた声で、
やっと助手席の彼が、
目を覚ました。
「あれ?俺寝ちゃったんだ~」
ええ、そりゃあもう、ガッツリ寝てました...