第32章 turning point~転機~
翔ちゃんの、少し体温の高い指が、
俺の頬をゆっくりと撫でる
俺の左の肩をベッドに縫い付けて、
上から見つめるその瞳は、
泣けてくるほど優しくて。
いつもの櫻井翔だ。
俺の大切な…
自分の命よりも大切な人…
「…さとし…」
「………」
「何で泣いてんだよ…」
「だって…」
「バカだな~」
俺は思わず両手を伸ばして、
翔ちゃんの首を引き寄せた。
直ぐ近くに来た、大きな瞳は、
優し気に微笑んで細められていて
それを見ただけで、
また涙が溢れてきて、目尻を伝った
「智…愛してる…それだけは信じて…」
「…翔ちゃん…」
「俺の命よりも…智…お前が大切なんだ」
「… …」
「…さとし…」
ゆっくりと近付いてくる唇が重なるその直前
俺は涙で濡れた睫毛を静かに下した
何度も角度を変えて、優しく唇を吸われ、
チュッチュッっという可愛いリップ音が部屋に響く
いつまでもたっても中に入ってこようとしない舌を誘うように、そっと口を開いて舌先を出すと、
翔ちゃんは、ほんの少し笑って、それを絡め取ってくれた
焦らしている…と言うよりは
優しく…俺のことを、宝物を扱うみたいに…
大切に抱いてくれようって…
それが痛いほどに伝わってくるから…
「もう、泣くなってば」
「だって…」
酒のせいじゃないけど、
涙が止まことを知らなくて…
翔ちゃんはそれを熱い唇で拭ってくれた。
もう~///
また泣けちゃうじゃんか///