第32章 turning point~転機~
「…どうって…そんなの…」
「見えないことをいいことに、こっそり秘密のことが行われてたりしてね~…」
秘密の、こと…?何言ってん……
「どんな事だと思う?漆黒に紛れてしまいたいこと…って」
「それは……」
「それは?」
「……翔ちゃんは?なんだと思うんだよ?」
「俺ぇ~?そうだな~…
ウサギがこっそりクリームたっぷりのショートケーキ食べてるっているのは?」
「なんだよ、それ?」
「だから~、月ではウサギが餅つきしてるって、みんな思っちゃってるからさ~。たまにはケーキ食べたくても、そうもいかないだろ?
だから隠れて食ってんの!…どう?」
どう?…って…
凄いいいこと考えちゃったみたいなドヤ顔して俺を見ている翔ちゃんは、俺に『離れてみよう』なんて言った人とは別人みたいだ…
「まあ、そういうのも可愛いけど…」
「じゃあ、智は?何が起こってるって思う~?」
………
「…そうだな~……
月に戻ったかぐや姫が、久しぶりに会った恋人と逢引してる…とか~?」
「逢引って…なんか、やらしい言い方」
「じゃあ、何て言うんだよ?暗いのいいことに、セックスしてる、とか??」
今この時間に、このシチュエーションで、
いつまでもそんなこと言ってる翔ちゃんに、少しイラっとした俺は、唇を尖らせて、そう答えた。