第32章 turning point~転機~
…………
ああ、この頃珍しく眠れないことが多くて、
何度も寝返りしているうちに、いつの間にか朝だった…と言う感じだったからかな〜?
久々のアルコールが、いつも以上に効いたみたい…
…………
「…智……さとし……ったく…」
…………
「あれぇ?翔ちゃん…?ろ~うして?」
気が付いたら、翔ちゃんの背中におぶわれてた。
「…何で、いるの?」
「何でじゃないよ〜、飲み過ぎ!」
「そんなに、飲んじゃ…いな…
あ、ごめん!降りるよ!自分で歩ける」
「…いいよ…このままで…」
「……翔ちゃん…」
マンションの駐車場から、翔ちゃんにおんぶされて揺られながら、
俺はそっと、翔ちゃんの肩に顔を埋めた。
………大好きな匂いがする…
今まで当たり前に包まれていた匂いだ
「くすぐったいよ〜…」
少し肩を竦める仕草に、
「…なで肩…」
つい憎まれ口を言ってしまう。
「お前〜!振り落とすぞ〜」
そう笑いながら、翔ちゃんは『よいしょ!』と、もう一回俺をしっかりと背中に縫い付けた。
「重いわ~」
…そう笑う背中は…温っかい…
ここはなんて安心するんだろう……
俺の大好きな…、一番大好きな匂いと、
大切な場所…
いつも側にあって、
それが当然だって思ってた
なのに………
どうして……
「智…ごめんな」
エレベ―ターが開いた瞬間、
翔ちゃんは小さくそう呟いた。
「…翔ちゃん…」
何て言ったらいいのか分かんない俺は、
黙って彼の次の言葉を待った。