第32章 turning point~転機~
翔ちゃんのこと、ちゃんと支えたい…
翔ちゃんが、心配しないで自分のやりたい仕事を出来る様に…俺は陰になって支えたい…
そう望むようになって、実際に家庭のことを頑張るようになったことは、別に苦でもないし、
それでいいって、
それが当たり前なんだって、そう思ってたんだ。
でも昨日、俺がずっと絵を描いていないことを指摘され、『それとこれとは違うだろ!』って思ったけど…
上手い言葉で反論できなかった。
『離れた方がいい』なんて…
そんな言葉を聞くことになるなんて、夢にも思ってなかったから…どうしていいのか分かんなくなっちゃって…
「よし!!そんなら証明してやるよ」
俺は、それこそ2年以上前に描くつもりで買い込んではみたけど、結局納戸に仕舞いこんでいたキャンバスを引っ張り出して来た。
イーゼルに乗せた80号の白い四角…
鉛筆を握ってみたけど…
…………
……なにも、浮かばない…
描きたいものが…
こみあげてくるものが…
なにも
ない……
………なんで?
描きたいものが何ひとつ浮かんでこない…
こんな事は、初めてだった
鉛筆を握って『白』に向かったまま
俺は暫く固まっていた…
何でもいいのに…
思うままに、好きなものを描けばいい…
なのに描けないなんて…
俺……
ホントは分かってたんじゃないのか…?
描けない事。
キャンバスに向かって、こうなることが怖くて、
やめてたんだ、きっと…