第32章 turning point~転機~
俺たちは『まさか いくら なんでも寿司』を
並んで食べた。
『腹が減っては、何とか』って言うからね?
智も俺の大袈裟なリアクションに黙っていられなくなり、渋々弁当を受け取りふたを開けた。
『いらない』と言っていた彼も、食べ始めたら気持ちも解れてきたらしく、
美味しそうに弁当を食べた。
「智、今すぐどうこうする訳じゃないから…」
「……」
「俺ももっとよく考えるよ…だから智も、ちょっと考えてみて欲しいんだ…俺たちだけのことじゃない…嵐の事も、だよ…」
「嵐の…こと…?」
「ま、今は食べよ!…これさ。いくら旨いよな~」
「うん、新鮮だし、粒が大っきいね~」
俺たちは、仲良く弁当を平らげて、
東京駅まで、少し休むことにした。
キャップを目深に被り目を閉じたけど、
眠れるわけない…
隣の智も、目は閉じているけど、寝ちゃいない。
隣り合わせに座ってはいるけど、
幸か不幸か、グリーン車のシートは広く、
肩さえ当たらない…
今は……
智の体温がいつも以上に恋しい…けど。
こんなに近くにいるのに…
なんでだろう。
智がすごく遠くに感じた。
こんなことは初めてだった。
いつも側にいる…それが当たり前で、
それが普通だって思ってた。
智……
お前以上に、俺だって迷ってるよ…
俺だって、離れたくない…
だけど。
それじゃ、ダメだ…
ダメなんだ…
そんな事を続けていたら、
いつか、俺たちはダメになる…
そんな事になる前に…
智……
愛してるよ…
あの頃よりも……ずっと、ずっと。