第31章 僕が僕らしくあるために
『何かのドッキリ』だと口では言いながら、
それが冗談なんかじゃないって…
智の涙は、語っている…
俺の言葉は、ちゃんと彼に伝わているんだ。
「こういうことだったの??」
「何が?」
「……翔ちゃん、俺のこと、嫌いになったの?」
「そんなこと…」
「嫌なところは言ってよ!直すから…
翔ちゃんが嫌だっていうことは、俺…」
「そうじゃない…そんなとこある訳ない…」
「だったら、なんでだよ///」
「だから…今の智は、智らしくない…っていうかさ」
「俺らしいよ!!全然無理なんかしてないし、
毎日楽しいし…それに…
俺には、翔ちゃんがいない人生なんか…」
智は言いながら、涙をポロポロ溢した。
智の手のひらが鳴った頬が、じんじんと熱く疼いた。
「勘違いしないで。
何も別れようとは言ってないよ。
俺だって、智と別れるなんて考えられない…ずっと一緒にいたいって、変わらず思ってる…」
「じゃあ、どうして離れるなんて!」
こんなに切羽詰まった智は、久しぶりに見た気がする。
「…俺と居ると、智はそれに一生懸命になりすぎてしまうからさ…だから、少し距離をとってもいいんじゃないかって…」
「距離なんか取らなくたって!」
「じゃあ、また明日から、好きな絵を描ける?
大きなキャンバスに向かって、自由に色を乗せられる?」
「…描けるよ…」
「嘘だ」
「翔ちゃん…」
悲しそうに、智の瞳が揺れる…