第31章 僕が僕らしくあるために
「気付いてやれなくて、ごめんね…
智が絵を描いてないこと」
「別にさ、描きたいって思わないから描かないだけで…そんなの、翔ちゃんには関係な…」
「あるんだよ!」
「…翔…ちゃん?」
驚いたような智の顔を見て、俺は小さく息を吐きだした。
冷静にならないと…
きちんと彼に分かってもらえるように、
しっかりと伝わるように…
俺たちは、同じグループのメンバーとしてデビューした。
その前のジュニアのときも、年も近かったし、わりと近い存在ではあった。
ダンスセンスも抜きに出ていた智は、
周りからも一目置かれていて…
その頃から、智は俺の憧れでもあった。
自由に、周りをまったく気にしない素振り。
誰かに何か言われても動じない強さ…
見かけはそんなんじゃないのに、
内に秘めているものは、一本筋が通っていて、
ふわふわとどっち着かずの状態だった俺には、
ある意味、眩しい存在だったんだ。
その頃から、智はちょこちょこ画を描いていた。
今みたいな大きな作品じゃなくて、
台本の片隅にイラストや似顔絵を描いて、
俺に見せてくれた。
「上手いな~、智くん!」
感動する俺に、翔くんも書いてみてよ…って。
渋々書いた俺の犬の絵を観て、
智は泣いたっけ…
息をするのも苦しい位に、涙流して笑った。
そんな彼に不思議と腹も立たなくて…
泣くほど楽しんでもらえたんなら、
俺の犬も満更捨てたもんじゃないじゃん♪
そう思うと、なんだか妙に嬉しかったっけ…