第31章 僕が僕らしくあるために
夕陽は、あっという間に空全体を茜色に染め上げた。
大きな太陽が水平線に、ゆっくりと沈んでいく…
ああ…何て綺麗なんだ…
智じゃないけど、
これじゃあ、忘れようったって、忘れられる訳ない…
どこを切り取っても同じ色は存在しない
世界中、どこを探したって、
こんな綺麗な景色はないんじゃないか?
そう思えるのは、きっと隣に智がいるから…
智と見る景色は、どんな景色だって輝いて見える。
コンサートのとき、
数多輝くペンライトの海の真ん中で、
智と手を繋いで見上げた景色が感動的なのは、
隣に智がいるから…
だから俺は…
「翔ちゃん…綺麗だね…今日のこの景色…
俺きっと、死ぬまで忘れないよ…」
「うん…俺も…」
………今なら…
「智…聞いて欲しい事があるんだけど…」
「……」
俺の顔を見ることもしないで、
夕陽が沈んでしまった辺りを見つめる智は、
言葉で表せないほど、美しい…
「実はさ」
「それってさ、俺が嬉しい事?それとも、嫌な事?」
……どっちだろ…??
「嫌な事なら、聞きたくないんだけど…」
やっぱり。
智は何か感じてるんだ…
俺の覚悟…
「嫌な事じゃないよ…本当は、
智が一番望んでいることだよ」
「俺が?」
「うん、そう。」
……智が…夕陽から俺の顔に視線を移した…
じっと見つめる瞳が、キラキラ光っている…
「智はさ、俺から離れた方がいいと思う…」