第31章 僕が僕らしくあるために
朝から食べきれないほど並べられた朝飯を済ませ、俺たちは荷物をまとめた。
「お世話になりました!舟盛りも、凄い豪華で感動しました」
「それはよかった…今度はもっと、ゆっくり泊まってください」
「ありがとうございます!
では、お会計を…」
カードを出そうとすると、
「もうお父様にいただいていますから」
「「えっ!?」」
総支配人の江口さんは、にっこり頷いた。
親父が……
俺と智の旅行に、ホテルを紹介してくれただけじゃなく、支払いまで……
「うれしいね…お義父さん…」
「…うん」
何だか、嬉しさと照れ臭さと、
何とも言えないくすぐったい気持ちになった。
親父は、結婚してからも、俺と同じように智に接してくれた。
始めは『大野くん』と呼んでいたのに、
『いつまでも大野くんもないか』と、名前で呼ぶことを宣言し、
それからは『智』と呼んでくれるようになり、家族の一員として受け入れてくれているのが、本当にありがたかった。
帰ったら、お土産に、釣った魚を持って顔を出そうかな〜…
↑しっかり釣る気でいる人
朝から広がった青空に、静かな波を見ながら、港に車を走らせる。
「翔ちゃん、翔ちゃんが来てるのにこんなに晴れてて、嘘みたいだね〜(^^)」
智にそう言われても腹が立たないのは、
自分でもそう思っているからだ。
俺が動くと雨が降ったり、
吹雪になったり…
そんなのにも最早驚かなくなってるけど。
「ホントに、マジで晴れたな〜」
「奇跡だよね、ホントに♪」
そう言われても、何とも思わない…
そのくらいに俺も、智の上機嫌が嬉しかった。