第31章 僕が僕らしくあるために
「…ごめんね、さとし…」
烈火のごとく怒っていたのが、
だんだんと泣きそうな声になった智を、包み込むように抱き締めた。
「俺が悪かったよ…智の気持ち、考えてなかったんだよね…」
「………」
腕の中で、智はじっとしている。
「そんなふうに思っててくれたなんて…ホントにごめん…
じゃあさ、これから予定してた釣りはキャンセルして、今からエッチしようよ!」
「え…?」
「ホテル、なんなら昼まで延長してさ、たっぷり思い出作りしよ♥️」
「あ、いや、でも…」
「よし!そうときまれば、急いで船、キャンセルしないと!」
そう言って携帯を取り出した。すると、
「待って!」
「なんで?急がないと出航の準備始めちゃ…」
「いいから…もう、いいからさ」
「でも、思い出に…」
「………(。-∀-)」
「……(^-^ゞ」
「…(´Д`)」
「ねえ、わざとやってるでしょ?」
「あれ?バレた〜?」
「もお、いいよ…全くさ、翔ちゃんはさ」
思惑通りに事が運び、
してやったりの俺に、智は大きなため息をついた。
「あのぉ〜…確認ですけど。
俺との濃厚エッチと船釣り、智、ホントはどっちが好きなの〜?」
「えええ〜、どっち、って…それは決められないよぉ〜」
「あはははは(^o^)」
「だってどっちも大好きなんだもん!」
と頭をかく智に、
「釣りに負けないように頑張ります!」
と、大袈裟に敬礼して見せた。
そんな俺を、智は笑って見てた。