第31章 僕が僕らしくあるために
「あっ、うんまっ!」
肉厚新鮮なアワビを堪能する俺の横で、
「ちょうちゃ…つっつゅいた…ほあっ…」
(訳:翔ちゃん、くっついた、ほら)
智はタコの吸盤が舌先にくっついたと、見せてきた。
「マジで、すげぇーな〜!」
「まだ生きてるんじゃない?」
モグモグしながら、嬉しそうに智は顔をクチャクチャにしている。
……来てよかった…
何だか、こんなに解放された彼を見たのが、久しぶりな気がして…
俺は胸が少し痛かった。
机の上に、溢れんばかりに並んだ海の幸、山の幸を腹一杯食べた。
はしゃぐ智をツマミに、
ビールも新潟の地酒へと移っている。
「しょおちゃん、これ、旨いね♪」
「幻の銘酒だってよ!」
「へえ〜、どうりで飲みやすいと思ったぁ♪」
「だからって、あんまり飲みすぎんなよ…」
「らいじょうぶらって!」
↑大丈夫だってと言っている
「良いお酒はねぇ〜、悪酔いしないの!
もお〜、櫻井翔なのに、そんなことも知らないのぉ〜?…」
いや、知ってるけどさ…
それにしたって………
………
……………………
それ見たことか(-_-;)
智は、『旨い旨い』と珍しくたくさん食べ、ご機嫌に酒を煽り、
そして、寝た……
ほら、言ったこっちゃない(-_-#)
こんなことになるのは、目に見えていた…
座布団を二枚並べて、
すっかり電池が切れたように眠ってしまった智を、俺は笑って見つめながら、
ひとりで鯛茶漬けを食べた。