第31章 僕が僕らしくあるために
「ああ〜!もう、翔ちゃん!
こんなところにキスマーク付けないでよぉ〜」
浴衣に着替えた智は、鏡を見ながら膨れている。
「え〜?そんなとこ、普通にしてりゃ、誰にも見えないだろ〜?」
智が『こんなところ』と言って怒っているのは、浴衣を大きく左右に開いた鎖骨の下……
仲良くならんで二つの朱…
タンクトップでも着てない限り
見えない場所…
俺だって、盛ってても、
その辺はわきまえてるってば!
「楽屋で衣装に着替えるときとか、相葉くんとかに冷やかされるもん!」
「見えないように着替えろよ…」
「でも、見つかっちゃったら…」
ピンポーン♪…
その時、部屋のチャイムが鳴った。
「あ、誰か来た!」
わざとグチグチ突っかかってくる智が、
ちょっと面倒くさくなってたところに、
ちょうど夕飯を運んで来たらしい。
「はぁーい!」
浴衣の前を整えながらドアを開けた。
運ばれてきた夕ご飯は、二人ではとても食べきれないほどの海の幸が、所狭しと並べられた。
パウダールームから出てきた智も、
綺麗に浴衣を整えている。
「わあ〜、すげぇー!」
「なあ〜、こんなにたくさん…」
「こちらの舟盛りは、総支配人からです」
「ああ〜、そうなんですね(^^)」
芸術的に盛り付けられた舟盛りの、
アワビやタコは、まだ動いていて、智は興味津々に指で突っついていた。