第30章 蜩〜ひぐらし〜
俺が笑ったら、智も笑った。
良かった…少しでも、元気出たかな?
「夜の撮影、虫に刺されんなよ~?」
『大丈夫、ムヒ持ってるし♪』
「俺が渡した、虫よけスプレーしろよ~」
『あれ~?それどこいったかな?』
「おいっ!!」
『うふふふ…嘘嘘…ちゃんと持ってるよ!外出る前にやってくから~…』
「あ、うん…そうだな…」
急に甘えた声出すから、ちょっと戸惑った。
「じゃ、また電話するわ~」
『うん』
「無理すんなよ~」
『うん』
「じゃ」
『あ、翔ちゃん!!』
切ろうとしたら、智が慌てた声でお俺を呼んで、
『ありがとね…事故のこと聞いて連絡くれたんでしょ?』
え……
『全然大丈夫だからね!心配しないで…
声が聞けて、うれしかった♡
じゃあね、バイバ~イ!』
……言いたいことだけ言って、
さっさと切りやがった///
智……
あいつ、ちゃんと分かってたんだ。
俺がLINEした意味…
怪我の具合とか聞かない俺のこと、
あいつはちゃんと分かってた…
………なんだか、
智はいつもあんな感じのくせに、
俺のこと、俺よりも分かってて…
俺は、あいつのこと、
分かってなかったんだな…
あいつの変化にも、
ニノに言われるまで気付いてなかった…
俺は、いったい何やってんだよ
智……
俺は、
お前に
何が出来る??
さとし…
………