第30章 蜩〜ひぐらし〜
それから2時間後だ
携帯が、智からの着信を告げた
丁度打ち合わせが終って楽屋に戻って来ていた時で、俺は急いで画面をスライドさせた。
『もしもし…』
「智?」
『うん…』
「撮影はもう終わったの?」
『え?…ああ〜…この後、もう2シーンあるんだ。夜のシーンだから、今は待ちなの…』
「そっか…」
『うん…』
………
『…翔ちゃん?』
「えっ?」
『俺の声が聞きたかったんじゃないのかよ…』
智は笑いながらそう言った。
…怪我したこと、話してこないんだな…
だったら俺から言わない方がいいのかも…
俺が知ってたことで、
逆に動揺させてもいけないし。
「撮影はどう?順調なの?」
『うん…まあまあ、かな…天気にも恵まれてるしね…』
「そっか、良かったな~、それが一番だよ!」
『翔ちゃんとは違うからね~♪』
「はあ~??おまえ~!」
『この後、演者さんたちでご飯食べるんだ…』
「お、そっか!座長さん!張り切らなきゃ~(^-^)」
『…うん…そだね…』
智…元気ないかも…
「智いなくて寂しいから、久々にエッチなDVDでも、観ちゃおっかな~♪」
『はあぁ~?何それ?』
「なんか、思い出したら無性にさ~…そんな気になっちゃって」
『たった1週間じゃん!我慢しろよ!
俺だって、我慢してるんだから~!!』
「じゃあ、今夜、電話でエッチする~?」
『マジで言ってんの??翔ちゃんのエッチ!!』
いつもの智の声になった。