• テキストサイズ

Blue【気象系BL】

第30章 蜩〜ひぐらし〜




言われたように、風呂に入って早めに布団に入った。

早めといっても、もう2時を回っていたけれど。


智には電話じゃなくてLINEで、

『家の事は心配すんな
智は映画に集中して
怪我しないように頑張れよ』

そう送ったけど、既読は付かなかった。


……もう、寝てるんだろうな…


ベッドの脇の照明だけ付けて、
読みかけの本を開いた。

睡魔が来るまで暫く読もうと思ったんだ。


だけど……

ベッドヘッドに寄り掛かって
ページに目を落としても、
ちっとも頭に入ってこない…

活字だけが滑っていく…


………



ニノの言葉が、頭の中に蘇る。

『自分が翔ちゃんをちゃんと支えたいんだって』

『あの人変わったじゃん』


酔って、ニノに話した、俺たちの生活のこと。



ニノに言われるまで、気付かなかった…


智が、絵を描いてない事…


『自由に好きなことを夢中でやってた智が好きだ』


ニノはそう言った。


ニノに言われなくたって、俺だってそんな智が好きだ。

好きだけど…

ニノが気付いていたのに、

俺は智がずっと絵筆を握っていない事
気付かなかった

……気付いてやれなかった…


大好きな絵だったはず…
寝る間も惜しんで描いていた時期もあった

いつから…

いったいいつから智の指から
絵具の匂いがしなくなった…?


………いくら考えても、分からなかった。


俺には

智のことが

分からなかった


/ 794ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp